売れるブランドはここが違う!KPIで測る価値創造の3ステップ
2025.07.03
ブランディング
はじめに:なぜ「KPI」でブランドを測る必要があるのか
「うちのブランド戦略、本当に効果があるのだろうか?」そんな疑問を抱えながらも、なかなか数値で証明できずにいる経営者や担当者の方は少なくありません。広告費やデザイン制作費、イベント開催費など、ブランディングには相応の投資が必要ですが、その効果が見えにくいため「本当に続けるべきなのか」という迷いが生じがちです。
特に中小企業では、限られた予算の中で最大限の効果を求められるため、ブランド投資の費用対効果を明確に示すことが経営判断の重要な要素となります。しかし従来のブランディングは「感覚的」「定性的」な評価に頼ることが多く、具体的な数値で成果を示すのが困難でした。
そこで注目されているのが、KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)を活用したブランド価値の数値化です。KPIとは、目標達成に向けた進捗状況を測定するための指標のことで、ビジネスの様々な分野で活用されています。ブランディングにおいても、適切なKPIを設定することで、投資効果を可視化し、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善のサイクル)を回すことが可能になります。
本記事では、初心者の方でも今すぐ実践できる「3ステップKPI設定法」をご紹介します。この手法を身につけることで、ブランド価値を数値化し、経営判断に活かせるデータを継続的に収集できるようになります。北海道の企業が首都圏進出を目指す際にも、客観的なデータに基づいたブランド戦略の立案と実行が可能になるでしょう。
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ステップ1|ゴールを明確化する:ブランド目標の設定
KPI設定の第一歩は、ブランディングで何を達成したいのかを明確にすることです。目標が曖昧なままでは、どの指標を測定すべきかが分からず、効果的なKPI設定は困難になります。
■ブランドゴールの種類
ブランディングの目標は大きく分けて3つのカテゴリーに分類できます。まず「認知向上」です。これは自社やサービスの存在を多くの人に知ってもらうことを目指します。新規事業の立ち上げや新市場への参入時によく設定される目標で、Web検索での上位表示やSNSでの露出増加などが具体的な施策として挙げられます。
次に「好意度向上」があります。これは既に自社を知っている人に対して、より好ましいイメージを持ってもらうことを目的とします。商品やサービスの品質向上、顧客対応の改善、企業の社会的責任活動などを通じて、顧客との関係性を深めていく段階です。
最後に「ロイヤルティ強化」は、既存顧客の継続利用や推奨行動を促進することを目標とします。リピート購入率の向上、口コミや紹介の増加、長期契約の獲得などが具体的な成果として現れます。
■SMARTゴールの立て方
目標設定にはSMARTフレームワークを活用することが効果的です。SMARTとは5つの要素の頭文字を取ったもので、それぞれSpecific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限設定)を意味します。
Specificでは「ブランド認知度を上げたい」ではなく「北海道内でのブランド認知度を現在の15%から30%に向上させたい」といった具体的な表現にします。Measurableでは数値で測れる要素を含め、Achievableでは現実的に達成可能な範囲で設定します。Relevantでは事業目標との関連性を確認し、Time-boundでは「6ヶ月以内に」といった明確な期限を設けます。
■実践Tip
目標設定を効率化するために、ワークシートを活用することをお勧めします。まず左側に「最終目標」を記載し、中央に「具体的施策」、右側に「期待するKPI」を書き出します。例えば最終目標が「新規顧客獲得20%増」の場合、施策として「WebサイトのSEO強化」「SNS広告配信」「展示会出展」などを挙げ、それぞれに対応するKPIとして「オーガニック検索流入数」「SNSエンゲージメント率」「名刺交換数」などを設定します。このように目標と施策とKPIを一つの表で管理することで、全体の整合性を保ちながら効果的な指標設定ができるようになります。
ステップ2|KPIを選ぶ:数値化すべき指標の決定
目標が明確になったら、次はその達成度を測るための具体的な指標を選定します。ブランドKPIは大きく「定量KPI」と「定性KPI」の2つに分けられ、それぞれ異なる側面からブランド価値を評価できます。
■定量KPI例(数値で測る)
定量KPIは客観的な数値で測定できる指標で、継続的な追跡が比較的容易です。代表的なものとして、Webサイトへのブランド流入数があります。これは検索エンジンで社名やブランド名を直接検索してサイトに訪問するユーザー数を測定するもので、ブランド認知度の向上を直接的に示す指標となります。
SNSエンゲージメント率も重要な指標です。これは投稿に対するいいね、コメント、シェアなどの反応数を投稿の総リーチ数で割って算出します。単純なフォロワー数よりも、実際にブランドに関心を持って反応してくれるユーザーの割合を測れるため、より質の高い指標といえます。
資料ダウンロード数は、特にBtoB企業において有効なKPIです。自社の製品カタログ、事例集、ホワイトペーパーなどのダウンロード数を追跡することで、潜在顧客の関心度や検討段階への移行状況を把握できます。この指標は後の商談化率や受注率との相関も分析しやすく、ROI(投資収益率)の算出にも活用できます。
■定性KPI例(意識で測る)
定性KPIは顧客の意識や感情を数値化した指標で、ブランドの本質的な価値を測定するのに適しています。顧客アンケートによるブランド好意度調査がその代表例です。「この会社に好感を持っている」「この会社の商品を家族や友人に勧めたい」といった質問に対する5段階評価の平均値を継続的に追跡することで、ブランドイメージの変化を捉えることができます。
NPS(Net Promoter Score:正味推奨度)は近年注目を集めている指標で、「この会社を知人に推奨する可能性はどの程度ですか」という質問に0から10の11段階で回答してもらい、9-10点を推奨者、7-8点を中立者、0-6点を批判者として分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引いて算出します。この指標は顧客ロイヤルティと将来の成長性に強い相関があることが多くの研究で示されています。
■実践Tip
KPI選定では、無料で利用できるツールを活用することで、コストを抑えながら効果的な測定が可能です。Google Analyticsでは流入数やページ滞在時間、Search Consoleでは検索キーワードや表示回数が無料で取得できます。SNS各プラットフォームの公式分析ツール(Facebook InsightsやTwitter Analyticsなど)も基本機能は無料で利用可能です。また、Google フォームやSurveyMonkeyなどを使えば、低コストで顧客アンケートを実施できます。重要なのは最初から完璧を求めず、まずは取得可能な指標から始めて、徐々に精度を高めていくことです。
ステップ3|モニタリング&レポート:PDCAを回す仕組みづくり
KPIを設定しただけでは意味がありません。継続的にデータを収集し、分析し、改善につなげる仕組みを構築することが重要です。このステップでは、日々の業務に無理なく組み込める監視・報告体制の作り方をご説明します。
■データ収集フローの構築
効率的なデータ収集には、各ツールからの情報を一元化する仕組みが必要です。Google Analyticsからは月次のオーガニック検索流入数やページ別訪問数を抽出し、Search Consoleからはブランド関連キーワードでの検索表示回数とクリック率を取得します。これらのデータは毎月同じ日に収集することで、継続的な比較分析が可能になります。
SNS分析では、各プラットフォームの公式ツールから投稿のリーチ数、エンゲージメント数、フォロワー増減数を収集します。FacebookページやInstagramビジネスアカウント、Twitter for Businessなどは、CSV形式でのデータ書き出し機能があるため、これを活用してスプレッドシートに統合します。
メールマーケティングを実施している場合は、配信ツールから開封率、クリック率、配信停止率などのデータも収集対象に加えます。これらの指標は顧客との関係性の変化を測る重要な要素となります。
■定例レポートの作り方
レポート作成では、受け手に応じて内容を調整することが重要です。経営層向けには全体的なトレンドとビジネスインパクトを中心にまとめ、担当者向けには詳細な数値と改善提案を含めた構成にします。
週次レポートでは前週との比較を中心に、大きな変動があった指標とその要因分析を簡潔に記載します。月次レポートでは前年同月との比較、四半期トレンド、目標に対する達成率を包含し、次月の施策提案も併せて記載します。
レポート構成は、サマリー、主要KPIの推移グラフ、特筆すべき変化の詳細分析、課題と改善提案、次期アクションプランという流れが効果的です。グラフは折れ線グラフや棒グラフを使い分け、視覚的に理解しやすい形式にします。
■実践Tip
Excel やGoogleスプレッドシートを使った自動集計ダッシュボードの構築により、レポート作成の効率化が図れます。IMPORTDATA関数やGoogle Analytics アドオンを活用すれば、多くのデータを自動的に取り込むことができます。VLOOKUP関数やPIVOT テーブル機能を使って、複数のデータソースを統合し、前月比や前年比の自動計算も設定できます。条件付き書式を設定することで、目標を上回った数値は緑色、下回った数値は赤色で表示し、一目で状況を把握できるようになります。初期設定に時間はかかりますが、一度構築すれば毎月のレポート作成時間を大幅に短縮できます。
ケーススタディ:KPI設定でブランド価値を数値化した地方企業の成功例
理論だけでは実践のイメージが湧きにくいため、実際にKPI設定によってブランド価値向上を実現した地方企業の事例をご紹介します。この事例は複数の実案件をもとに再構成したものですが、多くの中小企業が直面する課題と解決プロセスを反映しています。
この企業は北海道札幌市に本社を置く製造業で、従業員数約50名、年商8億円の規模です。主力商品は食品加工機械で、道内のみならず本州への販路拡大を目指していました。しかし「技術力は高いが知名度が低い」という課題を抱えており、営業活動の効率化とブランド認知度向上が急務でした。
従来の営業手法は展示会出展と既存顧客からの紹介に依存しており、新規開拓の手法が限定的でした。また、Webサイトはあるものの更新頻度が低く、SEO対策も不十分な状態でした。経営陣は「もっと多くの人に自社を知ってもらいたい」という想いはあったものの、具体的にどのような施策を打つべきか、その効果をどう測るべきかが明確ではありませんでした。
そこで同社では、3段階のKPI設計を実施しました。第一に認知向上を狙ったWeb流入KPIとして、ブランド名での検索流入数を月間100件から200件に倍増させることを目標に設定しました。併せて、業界関連キーワードでの検索流入も月間500件から1000件への増加を目指しました。
第二に商談化率まで見据えた資料ダウンロード数の設定です。製品カタログ、技術資料、導入事例集のダウンロード数を合計で月間20件から50件に増加させ、そのうち30%以上を商談につなげることを目標としました。
第三に顧客アンケートで好意度を測るNPS調査の実施です。既存顧客に対して四半期ごとにアンケートを実施し、NPSスコアを現状の+20から+35への向上を目指しました。
施策実行では、まずWebサイトのSEO強化とコンテンツ充実を図りました。業界専門用語の解説記事、導入事例の詳細紹介、技術者によるブログ連載などを月2回のペースで更新し、検索エンジンからの流入増加を狙いました。
SNSでは、製造現場の様子や新商品開発の舞台裏を紹介する投稿を週3回実施し、フォロワーとのエンゲージメント向上に取り組みました。また、業界関連のハッシュタグを効果的に活用し、潜在顧客へのリーチ拡大を図りました。また、展示会では従来の製品展示に加えて、来場者にとって有益な技術情報をまとめた資料を作成し、ダウンロード用のQRコードを設置しました。これにより、展示会後も継続的な接点を維持できる仕組みを構築しました。
12ヶ月間の取り組み結果として、Web流入数は+40%の増加を達成しました。特にブランド名での検索流入は目標を上回る+120%の増加となり、認知度向上の効果が数値で確認できました。資料ダウンロード数は+25%増となり、そのうち35%が実際の商談に発展し、目標を上回る商談化率を実現しました。NPSについても、既存顧客の満足度向上施策と併せて+10ポイントの改善を達成し、顧客ロイヤルティの向上が確認できました。
この成功の要因は、明確なKPI設定により施策の効果を可視化し、PDCAサイクルを高速で回せたことにあります。また、全社員がKPIを共有することで、営業部門だけでなく製造部門や管理部門も含めた全社的なブランディング意識の向上につながりました。
よくあるQ&A:KPI設定でつまずきやすい3つの疑問
KPI設定を進める中で、多くの企業が直面する共通の疑問があります。ここでは特に頻繁に寄せられる3つの質問とその解決策をご紹介します。
Q1. 指標が多すぎて管理できないときは?
KPI設定の初期段階では、あれもこれも測りたいという気持ちから、過剰な数の指標を設定してしまうケースがよくあります。しかし指標が多すぎると、データ収集や分析に膨大な時間がかかり、本来の目的である改善活動に時間を割けなくなってしまいます。
解決策としては、KPIを階層化して管理することが効果的です。最重要指標として3-5個の「プライマリKPI」を設定し、これらを経営層や関係者全員で共有します。その下に各プライマリKPIを詳細に分析するための「セカンダリKPI」を配置し、担当者レベルで管理します。例えば、プライマリKPIを「Web流入数」とした場合、セカンダリKPIには「オーガニック検索流入数」「SNS流入数」「ダイレクト流入数」などを設定します。
また、四半期ごとにKPIの見直しを行い、実際に改善活動に活用されていない指標は思い切って削除することも重要です。KPIは「測ること」が目的ではなく「改善すること」が目的であることを常に意識しましょう。
Q2. 定性KPIの数値化が難しい場合は?
ブランドイメージや顧客満足度といった定性的な要素を数値化することに困難を感じる企業は少なくありません。しかし、適切な手法を用いれば、定性的な要素も十分に数値化可能です。
最も基本的な方法は、5段階評価や10段階評価を用いたアンケート調査です。「当社に対する印象はいかがですか」といった質問に対して、「非常に良い(5点)」から「非常に悪い(1点)」までの選択肢を設け、回答の平均値を算出します。重要なのは質問文の表現を統一し、同じ条件で継続的に測定することです。
より高度な手法としては、テキストマイニングを活用した感情分析があります。SNSでの自社に関する投稿やレビューサイトでの評価コメントを収集し、ポジティブ・ネガティブ・ニュートラルに分類して数値化します。無料ツールでも基本的な感情分析は可能で、継続的な監視により定性的なブランドイメージの変化を捉えることができます。
Q3. 社内合意を得るにはどうすればいい?
KPI設定やブランディング施策への投資について、社内の理解を得ることに苦労するケースは多々あります。特に、すぐに売上に直結しない活動への予算確保は困難を伴います。
効果的なアプローチは、まず小規模なパイロットプロジェクト(試験的取り組み)から開始することです。例えば、1つのSNSプラットフォームだけでKPI設定による運用を3ヶ月間実施し、その結果を数値で示します。具体的な成果が見えれば、より大規模な取り組みへの理解も得やすくなります。
また、競合他社の成功事例や業界のベンチマークデータを活用することも有効です。「同業他社のA社では、ブランドKPI設定により新規問い合わせが30%増加した」といった具体的な事例を示すことで、投資の必要性を説得力をもって伝えることができます。
社内プレゼンテーションでは、KPIの数値だけでなく、それがビジネスに与える影響を明確に示すことが重要です。「Web流入数が増加した」だけでなく「Web流入数の増加により営業効率が向上し、1件あたりの新規開拓コストが20%削減された」といったように、経営陣が重視する指標との関連性を示しましょう。
いかがでしたか?
ここまで、KPIを活用したブランド価値の数値化について詳しく解説してきました。理論を理解することは重要ですが、実際に行動に移すことで初めて成果を得ることができます。最後に、今すぐ始められる具体的なアクションを3つご提案します。
まず第一に、ブランドゴール設定ワークシートを今週中に作成しましょう。先ほどご紹介したSMARTフレームワークを活用し、自社のブランディングで何を達成したいのかを明文化します。「なんとなく知名度を上げたい」ではなく「6ヶ月以内に、札幌市内での認知度を現在の10%から20%に向上させる」といった具体性を持たせることが重要です。このワークシートは、今後のKPI設定や施策立案の基盤となるため、関係者全員で議論しながら作成することをお勧めします。
第二に、定量・定性KPI一覧をエクセルまたはGoogleスプレッドシートにまとめることです。現在測定可能な指標から始めて、理想的に測定したい指標まで幅広くリストアップします。各指標について「現在値」「目標値」「測定方法」「更新頻度」「担当者」を明記し、一覧表として管理します。この作業により、自社の現状把握と目標設定の精度が大幅に向上します。
第三に、月次レポートテンプレートの作成と試運用を開始することです。完璧なレポートを作ろうとせず、まずは現在取得できるデータだけでも構いません。月1回のペースで数値をまとめ、前月との比較や気づいた点を記録します。継続することで、データの傾向が見えてくるだけでなく、レポート作成スキルも向上し、より効果的な分析ができるようになります。
これらのアクションは、特別な予算や高度なスキルを必要とせず、今日からでも始められるものばかりです。重要なのは完璧を求めず、まず一歩を踏み出すことです。小さな始まりであっても、継続することで必ず成果につながります。
ブランドKPIの設定と運用は、一朝一夕で完成するものではありません。しかし、継続的な取り組みにより、ブランド価値の向上とビジネス成長を同時に実現できる強力な手法です。北海道から全国、さらには海外への事業展開を目指す企業にとって、客観的なデータに基づいたブランド戦略は不可欠な要素となるでしょう。
ぜひ今日から、あなたの会社でもKPIを活用したブランド価値の数値化に取り組んでみてください。最初は小さな変化かもしれませんが、その積み重ねが大きな成果を生み出すはずです。
本記事でご紹介した「3ステップKPI設定法」以外にも、ブランディングやマーケティング、ホームページ制作に役立つ実践的な情報を当ブログで定期的に公開しています。また、「ブランド効果を数値化して経営判断に活かしたい」「KPI設定について詳しく相談したい」という方は、ぜひお気軽に株式会社ドリームクリエイトまでお問い合わせください。
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