3ステップで完成!全国企業も導入するブランドストーリー構築ワークショップの進め方
2025.06.19
ブランディング
1. はじめに:なぜ「ブランドストーリー」が企業の命運を分けるのか
現代の消費者行動は、従来の「機能性」「価格」中心の選択から大きく変化しています。マッキンゼーの調査によると、消費者の7割以上が「企業の価値観や物語に共感できるブランド」を選ぶ傾向にあることが明らかになっています。特に、BtoB企業においても同様の傾向が顕著です。決裁者は単なるサービスの比較だけでなく、「この会社と一緒に仕事をしたい」「この会社の考え方に共感する」という感情的な要素を重視するようになっています。
しかし、多くの中小企業や地方企業が直面する課題は明確です。「自社の強みは分かっているが、それをどう物語として表現すればいいのか分からない」「ブランドストーリーの必要性は理解しているが、具体的な進め方が見えない」といった声を日常的に耳にします。
年商5億円前後の中小企業では、マーケティング専任の担当者がいないケースも多く、経営者自身がブランディングを手がけなければならない状況が一般的です。また、首都圏と地方の情報格差、リソースの制約といった現実的な課題も存在します。
だからこそ、効率的で実践的な「ブランドストーリー構築ワークショップ」の手法が求められているのです。本記事では、実際に全国の企業で成果を上げている3ステップの進め方を、現場で培った経験をもとに詳しく解説していきます。
2. ブランドストーリー構築ワークショップの全体像
■「ワークショップ」とは?
ブランドストーリー構築ワークショップは、単なる座学や講義ではありません。参加者が実際に手を動かし、対話を通じて自社のストーリーを発見・構築していく体験型の手法です。
従来の「コンサルタントが分析して提案する」アプローチとは異なり、社内メンバーが主体となって自社の物語を紡ぎ出すプロセスこそが、ワークショップの最大の特徴です。このプロセスを経ることで、完成したブランドストーリーに対する社内の理解度と納得度が格段に高まります。
■メリット3点
第一に、社内メンバーの共通認識形成です。普段、同じ会社で働いていても、各部署が持つ「自社の強み」「顧客像」「目指すべき方向性」の認識にはズレが生じがちです。ワークショップを通じて、これらの認識を統一し、全社員が同じ方向を向く土台を作ることができます。
第二に、ストーリーの一貫性担保です。マーケティング資料、営業トーク、採用活動、SNS発信など、様々な場面で発信される企業メッセージが一貫していることは、ブランド構築において極めて重要です。ワークショップで作り上げたコアなストーリーを軸にすることで、この一貫性を確保できます。
第三に、自社らしさの言語化・可視化です。「なんとなく感じている自社の良さ」を具体的な言葉やビジュアルで表現できるようになることで、社外への発信力が飛躍的に向上します。特に、経営者の想いを組織全体で共有し、外部に伝えられる形にすることは、中小企業の成長において欠かせない要素です。
3. ステップ1:準備フェーズ(事前設計)
■ゴールとKPI設定
ワークショップを成功させるためには、明確なゴール設定が不可欠です。具体的な成果物として、ブランドピラー(企業の価値観を支える柱となる要素)、ペルソナ(理想的な顧客像)、タグライン(企業を象徴する短いメッセージ)などを定義しましょう。
KPIとしては、定量的な指標(Webサイト滞在時間の向上、SNSエンゲージメント率の向上、商談からの成約率向上など)と定性的な指標(社員のブランド理解度、顧客からのフィードバック内容の変化など)の両方を設定することが重要です。
■事前リサーチと資料準備
ワークショップの質を左右するのが、事前準備の充実度です。まず、自社のヒストリーを整理しましょう。創業時の想い、これまでの主要な転換点、印象的な顧客とのエピソードなどを時系列で整理します。競合分析シートも必須で、直接的な競合だけでなく、顧客が代替手段として検討する可能性のあるサービス・企業まで含めて分析し、自社の差別化ポイントを明確にします。
さらに、顧客インタビュー結果があれば理想的です。既存顧客に「なぜ当社を選んだのか」「当社の何に価値を感じているか」を率直に聞くことで、自社では気づけない強みを発見できることが多々あります。
■ファシリテーター選定とアジェンダ作成
外部ファシリテーターのメリットは、客観的な視点と専門的な進行スキルです。社内の既存の関係性や先入観に囚われることなく、新しい視点を提供できます。一方で、コストがかかることと、社内事情を理解するのに時間がかかることがデメリットです。
社内ファシリテーターの場合、コストを抑えられ、自社の事情に詳しいことがメリットですが、客観性の確保と進行技術の習得が課題となります。
アジェンダ作成では、参加者の集中力を考慮し、適切な休憩時間を設けることが重要です。また、各セッションの目的と期待される成果を明確に設定し、参加者全員で共有しておきましょう。
4. ステップ2:当日の進行ガイド
1.アイスブレイク&共通言語づくり(20分)
ワークショップの成功は、参加者がリラックスして本音で語れる環境作りから始まります。効果的なアイスブレイクとして「自社を色で表すと?」というワークがあります。
参加者一人ひとりに「自社のイメージを色で表現してもらい、その理由を共有してもらう」という簡単な作業ですが、これだけで参加者の自社に対する多様な見方が浮き彫りになります。「安定感のある青」「情熱的な赤」「成長を表す緑」など、同じ会社でも人によって印象が異なることを確認することで、ワークショップの価値を実感してもらえます。
この段階で、ワークショップで使用する用語の定義も共有しておきます。「ブランド」「ストーリー」「価値観」などの言葉は、人によって解釈が異なる場合があるため、参加者全員で共通の理解を持つことが重要です。
2.コアバリュー抽出エクササイズ(60分)
このセッションでは、付箋(ポストイット)を活用したブレインストーミングを行います。参加者には「自社の大切にしている価値観」「お客様に提供している価値」「他社との違い」などのテーマで、思いつく限りのキーワードを付箋に書き出してもらいます。
重要なのは、この段階では質より量を重視することです。「これは違うかもしれない」「当たり前すぎるかもしれない」といった自己判断は一旦置いて、できるだけ多くのキーワードを出してもらいます。
次に、出されたキーワードをグルーピングします。似たような内容のキーワードをまとめ、それぞれのグループに名前をつけていきます。このプロセスで、自社のコアバリューの候補が見えてきます。
最後に、各グループの重要度を参加者の投票で決定します。自社にとって最も重要だと思うグループに投票してもらい、上位3つ程度をコアバリューとして選定します。
3.ストーリーテリング実践(60分)
抽出されたコアバリューをもとに、実際のストーリーを構築していきます。効果的なストーリーテリングには「主人公」「課題」「解決」「未来」の4つの要素が必要です。
「主人公」は、自社の理想的な顧客です。具体的な人物像を設定し、その人の背景、悩み、目標などを詳しく描写します。「課題」は、その主人公が直面している問題や困りごとです。「解決」は、自社のサービスや製品がその課題をどのように解決するかです。「未来」は、解決後の主人公の理想的な状態を描きます。
このフレームワークを使って、参加者にチームを作ってもらい、それぞれ異なる角度からストーリーを作成してもらいます。BtoB企業であれば「新規事業立ち上げに悩む経営者」、BtoC企業であれば「特定のライフスタイルを送る消費者」など、具体的なシーンを想定してストーリーを作り上げます。
4.まとめと優先順位付け(30分)
各チームが作成したストーリーを発表し、参加者全員で評価を行います。評価基準は「自社らしさ」「顧客への響きやすさ」「実現可能性」などです。
投票方式で最も優れたストーリーを選定しつつ、他のストーリーの良い要素も取り入れて、最終的なブランドストーリーを完成させます。この段階で、今後のマーケティング活動で活用する具体的な表現方法も決定します。
5. ステップ3:フォローアップと社内浸透
■成果物のドキュメント化
ワークショップで作成したブランドストーリーを、実際の業務で活用できる形にドキュメント化することが重要です。ブランドガイドラインとして、ロゴの使用方法、カラーパレット、フォント、トーン&マナーなどと合わせて整理します。
具体的には、営業資料で使用するメッセージ例、Webサイトのコピー例、SNS投稿の文例、採用活動で使用するキャッチコピーなど、様々なシーンで活用できる実用的なガイドラインを作成します。
■定着化施策
せっかく作成したブランドストーリーも、社内で活用されなければ意味がありません。全社員向けの共有会を開催し、ワークショップに参加しなかった社員にもストーリーの背景と内容を理解してもらいます。
月次レビュー会では、ブランドストーリーに沿った活動ができているかを定期的にチェックします。また、社内イントラネットやSlackなどのコミュニケーションツールを活用して、ブランドストーリーを常に参照できる環境を整えます。
新入社員のオンボーディングプログラムにもブランドストーリーの理解を組み込み、会社の価値観を早期に浸透させることが重要です。
■PDCAサイクルの回し方
ブランドストーリーの効果を測定するKPIとして、Webサイトへの流入数、滞在時間、SNSでの反応(いいね、シェア、コメント数)、商談からの成約率、採用応募数の変化などを継続的にモニタリングします。
定期的にこれらの数値を分析し、ブランドストーリーの表現方法や発信チャネルを調整していきます。また、顧客からのフィードバックも積極的に収集し、ストーリーのブラッシュアップに活用します。
6. 導入事例:地方企業がブランドストーリーで売上15%UPした秘訣
道内の製造業A社(従業員30名)の事例をご紹介します。同社は創業50年の老舗企業でしたが、「技術力はあるが、それを外部に効果的に伝えられない」という課題を抱えていました。
ワークショップ実施前は、営業資料も技術仕様中心で、顧客との関係性も「価格競争」に陥りがちでした。社内アンケートでも「自社の強みを説明できない」と答える社員が7割を超えていました。
ワークショップを通じて発見されたのは「3世代にわたって受け継がれる職人技術」「地域の産業発展への貢献」「環境に配慮したものづくり」というコアバリューでした。これらを軸に「北海道の豊かな自然と共に歩む、持続可能なものづくりパートナー」というブランドストーリーを構築しました。
ワークショップ後、6ヶ月間で以下の変化が見られました。Webサイトの問い合わせ数が40%増加、既存顧客からの追加受注が25%増加、新規顧客からの成約率が20%向上、社員の自社への誇りを測るアンケートスコアが平均7.2点から8.9点に上昇しました。
特に印象的だったのは、価格競争から脱却し、「この会社に任せたい」という理由で選ばれるようになったことです。営業担当者からは「技術説明よりも、会社の想いや取り組みについて話す時間が増え、顧客との関係性が深まった」という声が聞かれました。
7. よくあるQ&A
Q1. 社内リソースが足りない場合は?
最小限の人数でも効果的なワークショップは可能です。経営者を含む3-4名でも十分成果を出せます。重要なのは、異なる部署や立場の人が参加することです。営業、製造、管理など、様々な視点が入ることで多角的なストーリーが構築できます。
時間の制約がある場合は、2-3時間×3回に分けて実施する方法もあります。むしろ、間隔を空けることで、参加者が熟考する時間を確保でき、より深いストーリーが生まれることもあります。
Q2. ワークショップ時間が取れない場合は?
オンラインツールを活用した分散型ワークショップも効果的です。事前に個人ワークを行い、オンライン会議で議論・統合するハイブリッド方式により、移動時間を削減しながら質の高いアウトプットを得られます。
また、既存の定例会議にワークショップの要素を組み込む方法もあります。月1回の経営会議の30分をブランドストーリー検討の時間に充てるなど、無理のない範囲で継続的に取り組むことが重要です。
Q3. 外部依頼と社内開催の違いは?
外部専門家に依頼する場合、客観的な視点と豊富な経験による効率的な進行が期待できます。特に、社内の利害関係や先入観に囚われない第三者の視点は、新しい発見をもたらすことが多いです。
社内開催の場合、コストを抑えつつ、自社の文化や事情を深く理解した上でストーリーを構築できます。また、ワークショップ後の定着化も社内主導で行いやすいというメリットがあります。
予算や目的に応じて、最初は外部専門家と協力し、2回目以降は社内で実施するという段階的アプローチも効果的です。
まとめ:今すぐ始めるブランドストーリー構築
いかがでしたか?
ブランドストーリー構築ワークショップの成功の鍵は、準備フェーズでの綿密な設計、当日の参加型進行、そして継続的なフォローアップの3ステップにあります。特に重要なのは「完璧を求めすぎない」ことです。最初から理想的なストーリーを作ろうとするのではなく、まずは「今の自社らしさ」を言語化し、それを実際の活動を通じてブラッシュアップしていく姿勢が大切です。
地方企業や中小企業であっても、独自のストーリーを持つことで大手企業との差別化は十分可能です。地域性、創業者の想い、従業員の情熱、顧客との関係性など、他社では決して真似できない要素を活かしたストーリーこそが、真の競争優位を生み出します。
ブランドストーリーは一度作ったら終わりではありません。事業の成長、市場の変化、組織の進化に合わせて継続的に見直し、発展させていくものです。今日から始められる第一歩として、まずは「自社の創業時の想い」を社内で共有することから始めてみてください。そこから見えてくる価値観や理念が、あなたの会社独自のブランドストーリーの土台となるはずです。
「まずは自社のストーリーを言語化したい」という方は、SNSのDMや以下のボタンからお気軽にご相談ください。貴社のブランドストーリー構築を全面サポートいたします。