デザインの力で食を引き立てる:感覚の融合から学ぶブランディングの秘訣

2023.09.01

DTPデザイン
デザインの力で食を引き立てる:感覚の融合から学ぶブランディングの秘訣

北海道旭川市のデザイン会社、ドリームクリエイトです。

私たちが日常で目にするデザインは、単なる視覚的な要素だけでなく、感覚全体を刺激するものとして存在しています。特に、食とデザインが組み合わさると、五感全てを魅了する内容となりますね。食のプレゼンテーション、食品のパッケージ、レストランのインテリアデザインなど、食に関連するデザインは私たちの食事の体験を豊かにし、感覚的な満足をもたらします。

この記事では、デザインが食の世界でどのように感覚を刺激し、私たちの食体験を豊かにするのかご紹介します。また、食の背後に隠れているデザインの哲学や、食とデザインがどのように相互作用しているのかについても触れてみます。デザインと食、この二つの要素が融合することで生まれる作用とは何なのでしょか。


 

白い皿に盛られた料理の写真

食のプレゼンテーションのアート

食は単なる栄養摂取の手段ではありません。特に有名なレストランともなれば、それは一つのアートであり、一つの体験なのです。その中心にはシェフや店としての表現のプレゼンテーションです。食の盛り付けやプレゼンテーションは、食事の体験や味わいに大きな影響を与える要素となっています。

私たちが料理を目の前にした瞬間、まず感じるのは視覚的な印象です。色鮮やかな野菜、きらびやかなソースの色艶、繊細に彫刻されたフルーツなど、美しい盛り付けは私たちの食欲を刺激します。この第一印象が、その後の食事の体験を大きく左右することが多いのです。

例えば、ミシュラン三ツ星のレストランでは、料理の盛り付けに非常に細心の注意が払われています。一皿の料理がテーブルに運ばれると、それはまるで絵画のよう。各要素が繊細に配置され、色や形、テクスチャが調和しています。

美しい料理の盛り付け写真

均一でない盛り付けや、特定の食材を強調することで、その食材の味をより強く感じることができます。逆に、乱雑な盛り付けは、味のバランスを乱す可能性があります。料理のテクスチャや形状も、味わいの認識に影響を与えます。例えば、滑らかなプリンとザラザラした砂糖のトッピングは、異なるテクスチャの組み合わせにより、味の深みや複雑さを感じさせます。

□世界のトップシェフたちの盛り付け哲学

レストラン「El Bulli」の料理

フェラン・アドリア(レストラン:El Bulli スペイン)

盛り付けの特徴はモダンで斬新なテクニックを取り入れたアヴァンギャルドな盛り付け。シェフのフェラン・アドリア氏は「食は驚きでなければならない」という考えを持っており、その哲学は彼の盛り付けにも反映されています。彼は伝統的な料理を再解釈し、新しい形やテクスチャでプレゼンテーションすることで、食事を一つのアートとして捉えています。

ノーマの料理写真

レネ・レゼピ(レストラン:Noma デンマーク)

盛り付けの特徴は自然と地域性を強調したシンプルで美しい盛り付け。シェフのレネ・レゼピ氏は「地域の食材を最大限に活かす」という哲学を持っています。彼の料理は、デンマークの風土や季節を反映したものであり、その盛り付けも自然の美しさを強調しています。

マッシモ・ボットゥーラの料理写真

マッシモ・ボットゥーラ(レストラン:Osteria Francescana イタリア)

盛り付けの特徴は、伝統的なイタリア料理をモダンに再解釈したクリエイティブな盛り付けです。シェフのマッシモ・ボットゥーラ氏は「伝統を破壊することで新しい伝統を作る」という考えを持っています。彼の料理はイタリアの伝統を尊重しつつも、新しい技法やアイディアを取り入れています。

これらのシェフたちは、それぞれ異なる背景や哲学を持っていますが、共通して食のプレゼンテーションに深いこだわりを持っています。彼らの盛り付けは、単なる装飾ではなく、料理の哲学やビジョンを表現する手段としての役割を果たしています。


 

パッケージデザインの見出し

パッケージデザインの重要性

ここまでは有名レストランのシェフの盛り付け例とその哲学を見てきましたが、ここからは市販されている食品のパッケージデザインについて考えてみましょう。私たち消費者が、その食品をコンビニやスーパーで購入しようと思った原因の一つに、パッケージが優れているから、ということはよくあります。

商品のパッケージは、消費者が商品に対して持つ第一印象を形成します。魅力的なパッケージは、商品を棚から手に取る確率を高める要因となりますし、
ブランドを伝えたり価値を表現するのに役立ちます。一貫性のあるデザインは、ブランドの認知度を高め、信頼感を生むことができます。また、パッケージには商品の特徴や利点、使用方法などの情報が記載されており、これが消費者の購買判断に影響を与えることももちろんあります。

では、成功した食品のパッケージデザインの事例をちょっと見てみましょう。

KitKat(キットカット)地域限定フレーバー

みなさんよくご存知のチョコレート菓子「KitKat(キットカット)」ですが、ご当地フレーバーがあるのをご存知ですか?

味はもちろんのこと、パッケージもその味ごとに変わっていて、カラフルだけどちょっと可愛らしいモダンなデザインがたくさんあります。

ご当地キットカットの画像

日本国内では、基本のチョコレートの他に、ホワイトチョコ、宇治抹茶、ほうじ茶、わさび、ずんだ、いちご、ヨーグルト、巨峰、夕張メロン、マンゴー、パッションフルーツやバナナ、信州リンゴなど、季節や地域を限定した商品が販売されており、これらのフレーバーは日本国外でも注目されています。

日本の消費者は新しいフレーバーや製品に対してとても関心が高く、定期的に新しい商品が登場することで消費者の興味を引きつけることができます。日本は四季がはっきりしており、それぞれの季節に合わせたフレーバーが開発されています。さらに、日本各地には独自の特産品や食文化があり、それを活かした地域限定という商品が好まれています。

お土産としてはもちろん、こんなパッケージだったら思わず手に取ってみたくなってしまいますね。

コカ・コーラの名前入りボトルキャンペーン

コカ・コーラは、新しい世代の消費者との関係をさらに強化し、ブランドの魅力を再確認するための新しいアプローチを求められていました。このために、2011年オーストラリアで「Share a Coke」キャンペーンが始まりました。このキャンペーンは、コカ・コーラのボトルに人々の名前を印刷するというシンプルなアイディアから生まれました。このキャンペーンは、消費者が自分の名前や友人・家族の名前が入ったボトルを見つける楽しさを提供しました。

通常のコカ・コーラのロゴが印刷されている部分に、さまざまな名前や愛称がプリントされたボトルが製造されました。これにより、消費者は自分の名前や親しい人の名前が入ったボトルを探すことができ、それが購入する動機となったのです。

Share a coke campaign

人々は、自分の名前や親しい人の名前が入ったボトルを見つけることに興奮し、購入する動機となりました。もちろん、名前入りのボトルは友人や家族へのプレゼントとしても人気がありました。消費者は自分の名前や友人の名前が入ったボトルの写真をSNSにアップロードし、それをシェアすることで、キャンペーンの拡散とブランドの露出を増加させるという副作用ももっていました。

このキャンペーンのよいところは、消費者とブランドとの間の感情的な結びつきを強化した部分にあります。自分の名前や親しい人の名前がブランドの製品に印刷されていることで、ブランドへの愛着や所属感が増加しました。この「Share a Coke」キャンペーンは、オーストラリアでの成功を受けて、世界70カ国以上で展開されることとなりました。このキャンペーンにより、コカ・コーラの販売は大幅に増加し、ブランドの価値も向上しました。


 

ファーストフード店の看板

食と色の関係

私たちが食事をする際、最初に食べ物に接触するのは目です。色は食べ物の鮮度や味、質感を予測する手がかりとして機能し、それによって私たちの食欲や選択が影響を受けます。

色が食の味や質感に与える心理的な影響

例えば赤なら、甘くてジューシーなフルーツや肉の鮮度を示す色として認識されることが多いです。また、赤は食欲を刺激するとも言われており、多くのレストランやファーストフードチェーンがロゴや看板や広告に赤を使用しています。

また、黄色は明るく、元気な色として知られています。甘さや柔らかさを示す色として認識されることが多いです。例えば、バナナやマンゴーなどの黄色いフルーツは甘くてジューシーというイメージがあります。また、黄色も食欲を刺激する色とも言われており、多くのスナック菓子やデザートのパッケージに使用されています。

食欲を刺激する色の背景や理由

人間の進化の過程で、私たちの先祖は食べ物を選ぶ際に色を手がかりとして使用していました。鮮やかな色のフルーツや野菜は、成熟していて栄養価が高いことを示していた可能性があります。このため、私たちの脳は鮮やかな色の食べ物に対してポジティブな反応を示すように進化してきたと考えられます。

また、食文化や習慣、宗教的な背景によって、特定の色が食べ物の味や質感に与える影響が異なる場合もあります。例えば、一部の文化では赤い食べ物は強いスパイスや辛さを示す色として認識されることがあります。

色は私たちの食事の選択や食欲に大きな影響を与える要因の一つです。食べ物の色は、その食べ物の味や質感、鮮度を予測する手がかりとして機能し、それによって私たちの食事の体験が形成されます。


 

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食のブランディングとストーリーテリング

食は単なる生命維持のためのものではありません。それは文化、伝統、そして人々の物語を通じて私たちに語りかけてきます。この物語的な要素は、食品やレストランのブランディングにおいても非常に重要な役割を果たしています。ストーリーテリングは、消費者とのつながりを深め、ブランドの価値を高める強力なツールとなり得ます。

消費者とのつながりを深める方法

  • 起源の物語:ある食品や料理がどこから来たのか、その背後にある歴史や文化を共有することで、消費者に深い理解と共感をもたらすことができます。
  • 製造過程:食品の製造過程や使用されている原材料に関する情報を共有することで、品質や安全性への信頼を築くことができます。
  • 人々の物語:ブランドを支える人々の物語や情熱を共有することで、消費者との感情的なつながりを強化することができます。

例えばスターバックスは、コーヒーの起源や生産者の物語を強調することで、消費者に高品質なコーヒー体験を提供しています。また、店舗ごとのコミュニティへの関与や、スタッフの物語を共有することで、ブランドと消費者とのつながりを深めています。

このように食のブランディングとストーリーテリングは、消費者とのつながりを深め、ブランドの価値を高めるための鍵となります。物語を通じて、食の背後にある情熱や価値、そして文化を共有することで、消費者との感情的な絆を築くことができます。

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いかがでしたか?

私たちが食事を楽しむ際、目にする色や形、香りや音、そして味わいが五感を刺激し、一つの美しい体験として心に残ります。デザインは、この五感の体験を最大限に引き立て、食の魅力を一層深める役割を果たしています。

ブランディングの世界でも、デザインの力は計り知れません。消費者の心をつかむためには、単なる商品の魅力だけでなく、それを取り巻く体験全体が重要です。食の世界で学んだ感覚の融合は、ブランドを形成し、消費者との強い絆を築くための鍵となります。

最後に、デザインと食の関係を考えることは、私たちが日常で感じるさまざまな体験や価値を再評価するきっかけとなります。食を通じて感じる美しさや喜び、そしてデザインの持つ無限の可能性を探っていきたいものです。