デザイン・マーケティングの大誤算?!業界を騒がせた失敗事例とその教訓

2023.08.30

DTPデザイン
デザイン・マーケティングの大誤算?!業界を騒がせた失敗事例とその教訓

北海道旭川市のデザイン会社、ドリームクリエイトです。

デザインは、製品やサービス、ブランド全体の印象を形成する重要な要素です。成功すれば、消費者の心をつかみ、ブランドの価値を高めることができます。しかし、デザインは芸術と科学の融合であり、その成功の鍵は常に明確ではありません。時には、最も経験豊富なデザイナーや大手企業でさえ、デザインの失敗を犯すことがあります。

これらの失敗は、単なる小さなミスから、ブランドの評価を大きく損なうものまで様々です。しかし、これらの失敗事例は、デザイナーやマーケター、企業にとって貴重な学びの機会となります。なぜなら、失敗から学ぶことで、同じ過ちを繰り返すことを避け、より効果的なデザイン戦略を築くことができるからです。

この記事では、過去に大きな話題となったデザインの失敗事例を取り上げ、その背後にある原因や教訓を探ることで、デザインの本質的な価値とその難しさを考えてみました。


 

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1.Newコークの失敗:マーケティングの教科書に載る大誤算

コカコーラ。世界のドリンクの王者。
そんなコカコーラでさえ、あることをきっかけに大誤算をしてしまったのです。

背景

1980年代初頭、アメリカの炭酸飲料市場は大きな変動を迎えていました。コカ・コーラは長年にわたりその市場をリードしてきましたが、主要な競合であるペプシコーラが急速にシェアを拡大していました。特に若い世代の消費者の間でペプシコーラの人気が高まっていたのです。

ペプシは「ペプシチャレンジ」というマーケティングキャンペーンを展開しました。これは、消費者にブラインドテストを行い、コカ・コーラとペプシのどちらがより美味しいかを判断させるものでした。このキャンペーンの結果、多くの参加者がペプシの味を好むという結果が出ました。このキャンペーンは大成功を収め、ペプシの市場シェアの増加に一役買いました。

ニューコークの登場

コカ・コーラはこの市場の変動とペプシの挑戦に対応するため、新しい戦略を模索し始めました。研究と開発の結果、新しいレシピが生まれました。この新しいレシピは、内部のブラインドテストでペプシに勝るという結果が出ていたため、大きな期待を背負ってのリリースとなりました。

1985年4月23日、コカ・コーラはニューヨークで記者会見を開き、新しいレシピを使用した「ニューコーク」を発表しました。この新しいコカ・コーラは、従来のコカ・コーラ(後に「コカ・コーラクラシック」として再販される)とは異なる甘さと炭酸のバランスを持っていました。

消費者の反応

しかし、ニューコークのリリース後、消費者からの反応は芳しくありませんでした。多くのコカ・コーラの熱心なファンは、オリジナルの味を求めて抗議の声を上げました。また、ニューコークの味に対する評価も賛否両論となり、結果的には多くの消費者が失望する結果となりました。

オリジナルへの回帰

抗議の声が高まる中、コカ・コーラはわずか数ヶ月後にオリジナルのレシピに戻す決定を下しました。この時点で、ニューコークは「コカ・コーラクラシック」として再び市場に投入され、消費者からの支持を取り戻すことに成功しました。

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教訓

ペプシは「ブランド」でコカ・コーラには勝てない、ということをきちんと理解していました。だからこそ、「味(というか味覚)」のみで勝負するブラインドテストキャンペーンというステージを作ったのです。このことをコカ・コーラは理解せず、味覚で劣ってしまったということにショックを受けて相手のステージに乗ってしまった、ということがそもそも失敗の原因と言えます。圧倒的な「ブランド」を支持されていたことを理解していなかったのです。ペプシのマーケティングの優秀さがわかるキャンペーンでもありました。

1. 顧客の声を無視しない

コカ・コーラは新しいレシピを導入する際、市場調査やブラインドテストの結果に基づいて判断しましたが、長年のファンからの強い反発を受けました。これは、既存の顧客の期待や感情を無視した結果であり、新しい製品やサービスを導入する際には、既存の顧客の声やフィードバックを十分に収集し、それを考慮に入れることの重要性を示しています。

2. ブランドアイデンティティの維持

コカ・コーラは、築き上げてきたブランドイメージで世界中の多くの人々に愛されてきました。ニューコークの導入は、このブランドアイデンティティを損なうものであり、消費者の混乱や不信感を生む原因となりました。ブランドの核となる価値やアイデンティティを維持しつつ、変革を進めるバランスが求められます。

3. 変更のコミュニケーションの重要性

ニューコークのリリース時、多くの消費者は突然の変更に驚きました。変更を行う際には、その理由や背景、目的を消費者に明確に伝えることで、理解や受け入れを得やすくなります。

4. 失敗からの迅速な対応

コカ・コーラはニューコークの失敗を認め、迅速にオリジナルのレシピに戻す決定を下しました。この迅速な対応は、ブランドの信頼を一部回復するのに役立ちました。失敗を認め、それを修正する勇気と柔軟性は、企業の危機管理において非常に重要です。

これらの教訓は、コカ・コーラの例を通じて得られるものであり、他の企業やブランドが同様の失敗を犯さないための指針となるでしょう。


 

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2.ギャップのロゴ変更:ブランドアイデンティティの挑戦

皆さんもよくご存知のカジュアルファッションブランド「GAP」。そんな誰もが1度は見たことがあるブランドのロゴも、こんな時がありました。

背景

ギャップは、1969年の創業から数十年にわたり、アメリカのカジュアルアパレル市場でのリーダーシップを築いてきました。しかし、2000年代に入ると、ファストファッションブランドの台頭や消費者の購買行動の変化により、ギャップの市場シェアは徐々に減少し始めました。この市場環境の変化を受けて、ギャップはブランドの再定義と近代化を目指すこととなりました。

ギャップは、新しいターゲット層の獲得や既存顧客の取り戻しを目指して、商品ラインナップや店舗デザインの変更を進めました。このブランド戦略の見直しの一環として、ロゴの変更も検討されるようになりました。

2010年のロゴ変更

2010年、ギャップは新しいブランドアイデンティティを打ち出すため、ロゴを大幅にリニューアルしました。新しいロゴは、ヘルヴェチカフォントを使用し、右上に小さな青い四角を配置するというシンプルなデザインでした。このロゴ変更の背景には、ギャップが現代的で洗練されたブランドイメージを目指していたことがあります。

新しいロゴのデザインは、クリーンでモダンな雰囲気を持っており、新しいターゲット層である若い世代や都市部の消費者にアピールすることを意図していました。また、シンプルなデザインは、デジタルメディアやSNSでの表示にも適していると考えられました。

消費者の反応

しかし、この新しいロゴはギャップのファンやデザインコミュニティから大きな批判を受けました。多くの人々は、新しいロゴがギャップの伝統やアイデンティティを反映していないと感じました。SNSやブログなどのオンライン上での反発も強く、多くの人々が旧ロゴの復活を求める声を上げました。

ロゴの撤回

ギャップは、新しいロゴの発表からわずか一週間後に、元のロゴに戻すことを発表しました。この迅速な決定は、消費者の声を尊重し、ブランドの信頼を維持するためのものでした。

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教訓

ギャップのロゴ変更の失敗は、ブランドアイデンティティの重要性と、それを変更する際のリスクを示しています。消費者の期待や感情、ブランドの歴史や伝統を尊重しつつ、変革を進めるバランスが求められます。

1. ブランドの歴史とアイデンティティの尊重

ギャップのロゴは、長年にわたり一貫したデザインであり、多くの消費者にとってブランドの象徴となっていました。急激な変更は、消費者の混乱や不信感を引き起こす可能性があります。ブランドの歴史やアイデンティティを尊重しつつ、変革を進めることが重要です。

2. 変更の意図とコミュニケーション

ギャップの新しいロゴは、その変更の意図や背景を十分に伝えることなく突如として発表されました。変更を行う際には、その理由や目的を明確に伝え、消費者の理解を得ることが必要です。

3. 消費者のフィードバックの収集と活用

新しいロゴの発表後、ギャップはSNSやオンライン上での大きな批判を受けました。これは、事前の消費者のフィードバックを十分に収集・分析していなかったことが一因と考えられます。新しい製品やサービス、ブランド戦略を導入する前に、ターゲットとなる消費者の意見や反応をしっかりと収集し、それを戦略の中に取り入れることが重要です。

4. 変更のリスク管理と迅速な対応

ギャップは新しいロゴの批判を受けた後、迅速に元のロゴに戻す決定を下しました。このような迅速な対応は、ブランドの信頼を一部回復するのに役立ちました。変更や新しい取り組みを行う際には、リスクを事前に予測し、問題が発生した場合の対応策を準備しておくことが求められます。

これらの教訓は、ギャップのロゴ変更の失敗を通じて得られるものであり、他の企業やブランドが同様の失敗を犯さないための指針となるでしょう。


 

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3.ロンドン2012オリンピックのロゴ:革新的デザインの賛否

世界規模の大イベントであり、世界中の人が注目するオリンピック。東京オリンピックの騒動もありましたが、オリンピックに関しては、どの時代もどの国でも一悶着あるようです。

背景

21世紀のオリンピックは、単なるスポーツイベントを超えて、文化や技術、デザインの面でも革新が求められていました。ロンドンは、2012年のオリンピックを「現代のオリンピック」として位置づけ、新しい時代の変革を体現するイベントを目指していました。そしてロンドンは、多様な文化や人々が共存する国際都市として知られています。この多様性を反映し、全ての人々に開かれたオリンピックを目指すという思いが、ロゴデザインにも影響を与えました。

2007年、ロンドンオリンピック組織委員会は、2012年に開催される夏季オリンピックの公式ロゴを発表しました。このロゴは、伝統的なオリンピックのロゴとは一線を画す、非常にモダンで抽象的なデザインとなっていました。

デザイン

ロゴは「2012」という数字をジグザグの形状で表現しています。このデザインは、動的でエネルギッシュな印象を与えることを意図しており、スポーツのダイナミズムやオリンピックの興奮を表現しています。ロゴの色彩は、鮮やかなピンクを基調としています(他の色のバージョンもあり)。これらの色は、若々しさや活力を象徴し、若い世代を中心とした広い層の人々にアピールすることを目的としています。

ロゴのデザインは非常に抽象的であり、一見すると「2012」という数字が読み取りにくいという意見もありました。しかし、この抽象性は、多様な解釈や想像を促すことを意図していたとされています。

反応

このロゴの発表後、多くの人々から様々な意見が寄せられました。一部の人々は、この革新的なデザインを高く評価し、新しい時代のオリンピックを象徴するものとして受け入れました。一方で、多くの批判的な意見も存在し、デザインが複雑すぎる、伝統的なオリンピックのイメージを損ねている、などの声が上がりました。

コストと制作

このロゴの制作には、約40万ポンド(当時の為替レートで約8000万円)がかかったと報じられました。ロゴのデザインは、国際的に有名なブランディングエージェンシー「Wolff Olins」によって手掛けられました。

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教訓

オリンピックのような歴史的なイベントでは、新しいアイディアやデザインを取り入れることは重要ですが、同時に伝統や過去の価値を尊重することも必要です。ロンドン2012のロゴは、革新的なデザインを追求した結果、一部の人々からは伝統を損なったとの批判を受けました。変革を進める際には、そのバランスを適切に取ることが求められます。

1. 対象層の理解

ロゴやブランディングは、特定の対象層にメッセージを伝えるためのものです。ロンドン2012のロゴは、特に若い世代にアピールすることを意図していましたが、幅広い年齢層の人々が参加・視聴するオリンピックにおいては、多様な対象層の意見や感じることを考慮することが重要です。

2. コミュニケーションの重要性

ロンドン2012のロゴが発表された際、そのデザインの意図や背景が十分に伝わらなかったことが、一部の批判の原因となりました。新しいデザインやアイディアを導入する際には、その背景や意図を明確に伝えるコミュニケーションが不可欠です。

3. フィードバックの収集と柔軟性

ロンドン2012のロゴに対する反応は賛否両論でした。このような大きなプロジェクトやイベントにおいては、事前に広範囲のフィードバックを収集し、必要に応じて柔軟に対応することが重要です。フィードバックは、デザインの改善や誤解の解消に役立ちます。ロンドン2012オリンピックのロゴは、デザインやブランディングに関する難しさをよく表しています。これらの教訓は、他のイベントやプロジェクトにおいても参考となるのではないでしょうか。

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いかがでしたか?

デザインやマーケティングは、単なるビジュアルの表現だけでなく、ブランドの価値やメッセージを伝える重要な要素です。今回取り上げたニューコーク、ギャップのロゴ、ロンドン2012年オリンピックのロゴは、それぞれが大きな期待とともに発表され、多くの反響を呼び起こしました。しかし、これらのデザインは一部の期待を裏切り、業界や消費者からの批判を受ける結果となりました。

これらの失敗事例から学べる最も大切な教訓は、デザインの背後にある意図やメッセージ、そして対象となるオーディエンスの期待や感情を深く理解し、それを反映することの重要性です。また、新しいアイディアやアプローチを試みる際のリスクを適切に評価し、柔軟に対応する能力も求められます。

デザインの世界は、常に変化と挑戦に満ちています。しかし、過去の失敗を繰り返さないためには、これらの事例とその教訓を忘れずに、未来のデザインの取り組みに活かしていくことが不可欠です。

最後に、デザインは試行錯誤の連続であり、失敗から学び、成長するプロセスでもあります。これらの失敗事例を通じて、デザインの深い意義や価値を再認識し、より良いデザインを追求するためのヒントとして受け取っていただければ幸いです。