昭和のポスターデザイン:時代を彩ったアート作品を紐解く

2023.10.16

デザイン全般
昭和のポスターデザイン:時代を彩ったアート作品を紐解く

北海道旭川市のデザイン会社、ドリームクリエイトです。

昭和と聞くと、もう結構昔のような気がしてしまいます。それもそのはず、もう30年以上昔の話ですよね。物価もトレンドも考え方も変化して当然です。でも、今見ると新鮮なものもあったりします。当時でしか作ることのできなかったデザインは、現代であっても興味深いものです。

昭和時代、日本は独自の文化と芸術が花開いた時代でした。そのなかでも、広告やポスターデザインは独自の魅力を放っていました。この記事では、昭和のポスターデザインがどのように時代の雰囲気や文化を反映し、アートの進化を示していたのか。デジタルツールなどなかった時代に、どうやってこれらが生み出されてきたのか。

ちょっとご紹介したいと思います。


 

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■昭和のデザインの特徴

昭和時代のデザインには独自の特徴があり、その時代独特の雰囲気や美学が反映されています。

昭和時代のデザインは、柔らかで温かいトーンの色使いが特徴的でした。茶色や淡いピンク、レトロな赤などがよく使われ、親しみやすい印象を与えます。そういったタッチが好まれていた、というよりは、そういったタッチしか描けなかった、という方が正しいかもしれません。コンピュータグラフィックスが一般的ではなかった時代なので、昭和のデザインには手描きのイラストや文字が多いからです。これが、デザインに人間味と温もりを与えています。

また、昭和モダンという要素があります。和風の要素と西洋の影響が融合したスタイルで、昭和という激動の時代に様々な文化が日本に入ってきたことに由来します。これがデザインにも表れ、和風のモチーフや伝統的な要素が、モダンなデザインと組み合わさっています。そして、当時の生活様式や価値観がデザインに反映されています。昭和初期は昭和モダンながらも洋風の影響もあり、昭和後期になると経済の発展と共に洋風なデザインも増えました。

昭和時代のポスターや広告にはアート性が強く表れています。イラストや写真だけでなく、文字や配置にも工夫が凝らされ、メッセージが視覚的に強調されています。企業の商標やロゴも、昭和のデザインにおいて独自性があります。シンプルでありながらも特徴的なマークやフォントが使われ、企業のイメージを鮮明に表現しています。これらの特徴が融合して、昭和時代のデザインが独自の美しさを持っています。


 

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■昭和のポスターに込められたメッセージ

昭和時代のポスターデザインには、様々なメッセージが込められており、当時の社会や文化の特徴が反映されています。以下は、昭和のポスターに込められた主なメッセージの一例です。

国民動員と戦時ポスター

戦時中、ポスターは国民に対して協力と団結を促すメッセージを伝えました。例えば、「一家心を合わせて国を守れ」や「節約は勝利の近道」といったキャッチフレーズが使われ、国民の戦意高揚と資源の節約が訴えられました。

生活の向上と経済成長

戦後、昭和初期には生活の向上が訴えられました。家庭用品や電化製品のポスターでは、新しい商品が豊かな生活を象徴しました。また、工業製品のポスターでは「もっと働いて、もっと生活を豊かに」といったメッセージが見られました。

健康と福祉

昭和後期には、国民の健康への意識が高まりました。予防接種や健康診断のポスターでは、家庭や地域全体で健康を守るための啓発が行われました。例えば、家族が描かれたポスターで「元気に過ごそう」などが使われました。

観光と地域振興

観光地や地域振興を促進するポスターでは、美しい風景や伝統的な文化が活かされました。観光地への誘致や地域資源の活用がメッセージとして込められ、地域振興が図られました。

消費文化の拡大

消費文化の拡大期には、新製品やセールのポスターが多くなりました。特に昭和後期には、洋服や家電製品、食品などがアピールされ、豊かな生活への憧れが表現されました。

教育と文化

文化・芸術イベントや教育に関するポスターでは、知識の普及やイベントへの参加が奨励されました。美術展や学習イベントを紹介するポスターが、文化への関心を高める役割を果たしました。

これらのポスターデザインは、社会の変化やニーズに応じて異なるメッセージを伝え、昭和時代の多様な側面を表現しています。


 

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■昭和のポスターの広告としての役割

昭和時代のポスターが果たしていた広告としての役割について詳しく見てみましょう。

商品の宣伝

昭和時代のポスターは、主に商品やサービスの宣伝手段として使用されました。新製品の魅力や特長を視覚的にアピールし、消費者の興味を引くことが目的でした。例えば、昭和初期には家庭用電化製品、昭和後期には洋服や食品などが積極的に宣伝されました。

セールスポイントの強調

商品の良さや特長を強調するため、ポスターはセールスポイントを際立たせるデザインが多かったです。価格、品質、利便性などが目に留まるように工夫され、消費者に購買を促す効果がありました。

消費文化の醸成

戦後の経済復興期において、昭和のポスターは消費文化の醸成に一役買いました。豊かな生活や新しい商品への憧れを煽り、消費行動を活発化させる役割を果たしました。

地域振興とイベント告知

地域振興や文化・芸術イベントのポスターは、地元の人々や観光客に向けて地域の特産品やイベントをアピールしました。これにより地域経済の振興や文化の発展に寄与しました。

社会的なメッセージの伝達

戦時中や災害時には、ポスターを通じて社会的なメッセージが伝えられました。節約、団結、安全確保など、社会的な課題に対する意識を高め、市民に行動を促しました。

企業やブランドのイメージ構築

ポスターは企業やブランドのイメージを構築する手段でもありました。企業の理念や価値観がデザインに込められ、顧客に対して信頼感や親しみやすさを伝えることが求められました。

昭和時代のポスターは、広告としての役割を通じて社会や消費者とのコミュニケーションを深め、時代の潮流を反映しています。


 

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■昭和デザインの影響と継承

昭和デザインが現代に与えた影響と、そのデザイン要素が継承されている様子について詳しく見てみましょう。

レトロなトレンドとしての復活

近年、昭和時代のデザインがレトロなトレンドとして再評価され、懐かしさを求める人々に受け入れられています。昭和のカラーパレットや手描きのイラスト、レトロなフォントが、広告やデザインプロジェクトで故意に採用されています。

ヴィンテージ風デザインの増加

ヴィンテージ風デザインは、昭和時代のデザインから影響を受けています。アートや広告において、あえて昭和のデザイン要素を取り入れ、クラシックでありながらも新鮮な印象を与える手法が広く用いられています。

カフェやレストランのコンセプトデザイン

カフェやレストランの内装やメニュー、広告デザインにおいて、昭和時代の雰囲気を再現する取り組みが見られます。懐かしさや温もりを感じさせるデザインが、お店の雰囲気や顧客の心を惹きつけています。

商品パッケージのデザイン

昭和のデザイン要素は、商品パッケージデザインにもよく見られます。特に飲料やスナックなど、懐かしい雰囲気を楽しむことができる商品は、昭和のデザインスタイルを継承しています。

ファッションとアパレルデザイン

ファッション業界でも昭和のデザインが影響を与えています。レトロな柄やカラーリング、昭和時代のスタイルを再現したアイテムが、トレンドとして定着しています。

デジタルメディアにおける昭和レトロ

インターネットやソーシャルメディア上で、昭和のレトロなデザインが人気を集めています。昭和のアイコンやポップカルチャーをデジタルアートやウェブデザインに取り入れ、新しいコンテクストで楽しむ動きが広がっています。

これらの要素が、昭和時代のデザインの影響を現代に持ち込み、新しい表現形態やクリエイティブなアプローチを生み出しています。昭和デザインの特徴が時代を超えて愛され、進化し続けている様子が興味深いですね。

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いかがでしたか?

昭和のポスターデザインは、その独自性と美しさから今もなお称賛されています。昭和のアートが描き出す時代の魅力と、現代に受け継がれるその影響は計り知れません。その時代とその時の技術でしか生み出すことのできない昭和デザイン。戦前、戦後と日本の立場や意識が変化し、まさに時代に翻弄されたデザインの歴史でもありました。

懐かしさと共に、これからのアートとデザインの可能性を考える一歩となれば幸いです。